プロジェクト

横浜市西区の準防火地域に計画された木造3階建ての共同住宅(木三共)です。1フロアに1LDKの住戸が3戸配置された都市型の単身者向けアパートメントとして計画しました。
都市部における建築木質化の推進を目的として、壁及び床スラブといった建築を構成する構造材全てをCLT材で構成したフルCLTのパネル構造として計画しています。防火性、遮音性、施工性といったCLTのメリットを存分に活かした建物をつくりあげることで、都市部におけるCLTによる木造共同住宅のプロトタイプとなることが期待されています。また設計と施工両面においてBIMを活用しています。
設計検討、作図、プレゼンテーションなどの設計にまつわる業務の他、QRコードをCLTに貼り、建て方時にCLTの順番をBIMモデルを用いて可視化するなど、BIMの新たな活用方法を試験導入しています。

設計におけるBIM活用

住戸の平面カットモデル

企画設計段階からBIMモデルによるスタディーを行い、基本及び実施設計を通してBIMモデルから全ての設計図面及びパースを作成しました。
BIMモデルは構造設計者から提示されたCLTパネル割付に基づいて全て3Dモデルで作成し、建築的な納まりや設備配管との整合等を検証を行いました。本物件はフルCLT構造としたため、壁量とそのバランスを確保するために多くの時間を費やしました。また共同住宅に求められる間取りと壁の配置には細心の配慮が求められます。
それらの問題を解決するためにBIMの3DモデルにCLT壁を配置しながら空間検証を行い、構造設計に反映させるという作業を繰り返しました。

施工におけるBIM活用

CLT製作を担当する銘建工業より入手したCLT製作図及び番付表の情報を全てBIMモデルに取り込み、3DモデルにCLTの製作番号を全て割当てました。金物まで再現した3Dモデル内のCLTパネルに製作番号を割り当て、デジタル上にバーチャルなCLT建物モデルの作成を行いました。そしてそのモデルを利用して施工者が建て方の順番や、ラフタークレーンを配置するなどの施工計画を立てる際に活用出来るようにしました。

施工用にリメイクしたBIMモデル
施工用にリメイクしたBIMモデル
CLT製作図の内容や現場の揚重計画を反映させ施工BIMとして活用
CLT製作図の内容や現場の揚重計画を反映させ施工BIMとして活用

3Dモデルに割り当てた番付と符号したQRコードを発行し、実物のCLTパネルに貼り付けを行いました。スマートフォンやタブレットのカメラでそのQRコードを読み取ると、デバイス内のBIMアプリが立ち上がり、そのCLTパネルが建物のどこにあるのかを3Dモデル上でハイライト表示する仕組みとなっています。

QRコードを防水性のあるラベルシールにプリントし、CLT加工工場において貼りつけている様子
QRコードを防水性のあるラベルシールにプリントし、CLT加工工場において貼りつけている様子
QRコードを貼り付けたCLTパネル
QRコードを貼り付けたCLTパネル

今回導入したこの仕組みを用いてCLTを中継ヤードに搬出入する際や建て方を行う際に、CLTの順番が正しく置かれているかどうかを確認しました。通常は図面に書かれた番付でCLTの配置場所を確認しますが、この仕組みを用いれば図面を開くことなく瞬時にCLTの配置場所を確認することができます。

中継ヤードに運び込まれたCLTパネルの積載順をBIMモデルで確認している様子
中継ヤードに運び込まれたCLTパネルの積載順をBIMモデルで確認している様子
同左

CLTに貼られたQRコードからBIMがたちがる様子

CLTパネル壁式構造における共同住宅の壁配置効率化と居住スペースの確保

平面におけるダブルウォールのレイアウト(オレンジ色)
平面におけるダブルウォールのレイアウト(オレンジ色)

本物件は1部屋が24㎡〜33㎡の1DKを敷地形状に合わせた雁行型のレイアウトとし、町並みに対して豊かな表情を作り出す計画としています。
そのようなプランでは、耐力壁の配置が偏るため、CLTパネル工法に不向きと捉えられていました。
今回事例では課題を解決するために、2枚のCLTパネルを重ねて配置し、1枚分の壁の長さで倍の壁量を稼げるダブルウォール工法を採用しました。そのことによりCLTパネル工法でも、田の字形以外のプランニングを成立させることが可能であることが立証されました。今後計画される同様の建物や、老健・宿泊施設といった類似用途においても、間取りの自由度を確保したCLTパネル工法による建築が可能になると考えられます。

ダブルウォール工法とする場合、従来のコの字型せん断金物を用いるとビス打ちができないという問題点がありました。
今回の建築実証ではそのような課題を解決するために2種類のダブルウォール金物を用いて、設計及び施工実証を行いました。

せん断金物D−32を用いたダブルウォールの部の施工図
せん断金物D−32を用いたダブルウォールの部の施工図

せん断金物D−32を用いた実証
・せん断金物D−32を建て込み前の壁パネル下部に取り付け
・基礎に設けたホールに挿入
・ホールとせん断金物D−32の隙間は建て方後にセルフレベリング材を流し込み固定

建込み前にせん断金物D−32を取り付けた様子
建込み前にせん断金物D−32を取り付けた様子
基礎に設けたせん断金物D−32を差し込む様子
基礎に設けたせん断金物D−32を差し込む様子
「A−1」プレート型金物の施工図
「A−1」プレート型金物の施工図

せん断金物「A−1」をを用いた実証
・銘建工業が独自に開発したプレート型のダブルウォール用せん断金物用せん断金物

建込み前に基礎に取り付けた様子
建込み前に基礎に取り付けた様子
ダブルウォール内側のパネルを差し込んだ様子
ダブルウォール内側のパネルを差し込んだ様子

計画当初はダブルウォールと基礎を緊結するせん断金物をすべてを「D−32」で試験採用する予定でした。しかし施工段階において地中梁の主筋や定着筋と干渉する部位が多数発生したため⑩通りのみの試験施工とし、その他の部位は銘建工業が開発した「A−1」をせん断金物として採用しました。
せん断金物D−32によるダブルウォールの施工を行う際は、設計の際に予め地中梁の幅に余裕をもたせる措置が必要になるということが、今回の実証において確認されました。

建築概要

住 所  :横浜市西区東ヶ丘
工 期  :2022年11月1日 〜 2023年7月26日
発注者  :個 人
設計・監理:ANALOG 株式会社 
構造設計 :株式会社 木構堂
施 工  :株式会社 白井組
CLTパネル:銘建工業 株式会社
主要用途 :共同住宅(9住戸)
構造形式 :CLTパネル構造/3階建て(外部階段/鉄骨造)
規  模 :敷地面積/237.67㎡ 建築面積/117.79㎡ 延床面積/235.89㎡
地域・地区:第一種住居地域/防火地域/第4種高度地区
前面道路 :4.0 m(42条2項道路/狭隘道路拡幅事業)
外壁仕上 :窯業系サイディング
屋根仕上 :ガルバリウム鋼板

竣工写真