プロジェクト概要
フラッグシップとして計画された路面店
銀座伊東屋横浜元町店は、元町商店街の汐汲坂の登り口に位置し、1階から3階が店舗、4階がストレージスペースで構成された路面店舗です。ZARAが入居するために建てられた建物をZARAの退去に伴い、伊東屋の店舗として1棟まるごとフルリノベーションし、2018年9月にオープンしました。
銀座につぐ伊東屋の本店と位置づけられ、銀座本店のコンセプトである”過ごす場所”と横浜のもつ自由な空気感を掛け合わせてデザインされています。また各フロアでは体験型のサービスを展開し、顧客が店舗で得られる価値を高められる仕掛けが施された店舗でもあります。
クライアントの要望
銀座につぐ本店という位置づけのため、フロアコンセプトや内装のトーン&マナーは銀座本店を引き継ぎながら、元町店ならでは雰囲気をどう作っていくか、各フロアにおいて計画された体験型サービスをフロアのデザインにどう落とし込むかがテーマとして課されました。
また元町商店街には店舗ファサードの色合いやサインの掲出方法などについて定めた「元町通り街づくり協定」が策定されており、それらのデザインについては、元町商店街と協議を重ねながら慎重にデザインすることが求められました。
デザインによる解決策
本店のコンセプト「過ごす場所」を引き継いだうえで、新しい文化やモノを積極的に受け入れてきた横浜のもつ「自由な空気感」掛け合わせるデザインとしました。銀座本店で使用しているフローリングや木調シート、塗装色を全体のデザインコードとして採用することで、自然で明るい空気感を作り出しました。
内装や什器の仕上げにおいては、オークやモルタルといった自然で手作りの風合いをダイレクトに表現できる素材、そして、それらの素材を引き立たせる白やチャコールグレーといった色彩が品よく映える仕上げ材を注意深く選定しています。また木調の仕上げ材においては、壁や天井に使用する塩ビシートと什器類に使用されるメラミン化粧板を同柄とすることにより、空間に統一感をもたらしています。
体験型サービスのデザイン
各フロアには店舗の付加価値を高める体験型のサービスが用意されています。
1階:オリジナルノートを作れる「Note Couture」
2階:購入したはがきや便箋にすぐに手紙を書き投函出来る「Write & Post」
3階:8つのパーツから自分好みの万年筆が作れる「My Mighty」
銀座本店でも展開されているこれらのサービス空間ですが、商店街の路面店という、よりきめ細やかなサービスに対応するために、繊細なディティールでデザインし元町店でしか得られない体験価値を提供しています。
什器のデザイン
店内の造作及び島什器はすべて専用にデザインされた什器で構成されています。これらの什器は伊東屋の担当者とダボ穴の径やピッチに至るまで詳細に図面を作成し製作しています。また各店舗で使いまわしができるように決められたモジュールで設計されています。什器も建築の一部であるという認識のもとに、使いやすく空間の一部として溶け込んでいくようなデザインとしています。
BIMによる設計
プロジェクト開始時よりBIM(Building Information Modeling)を採用し、3Dモデルによる設計を行いました。3Dモデルから作成したウォークスルー動画やレンダリングパースを用いて計画内容のプレゼンテーションを行い、クライアントとのスピーディーな合意形成及び問題点の把握を行いました。什器内の棚1枚1枚まで忠実に3Dモデルを作成し、施主はもちろんのこと、施工者などとも3Dモデルを確認し、常に完成形がイメージできる状態で設計及び現場を進めることができました。また基本設計図、実施設計図も3Dモデルから2D図面を抽出して作成しています。
建築概要
所 在 地:横浜市中区元町
面 積:1 F / 203.95㎡2 F / 227.91㎡、3 F /1 93.96㎡、4F / 134.66㎡
合 計 / 1760.48㎡
設計期間:約4ヶ月間
工 期:約1.5ヶ月間
施 主:株式会社伊東屋
設計監理:ANALOG株式会社
内装施工:株式会社丹青社
什器制作:オカムラ
外部サイン:東京システック
照明デザイン:モデュレックス
BGM 制作:マスターマインドプロダクション
写 真:中道 淳/ナカサアンドパートナーズ
主な仕上げ材料
床 :ナラフローリング
壁 :1,3F AEP 塗装/ 2F モルタル調塗装
天 井:1,3F AEP 塗装/ 2F 木調シート
什 器:木調メラミン板