施設概要
社会問題を解決するために誕生したアリーナ
ぴあアリーナMMは、ぴあ株式会社が建設し運営する収容客数1万2千席のコンサートアリーナです。ホール・会場不足という社会問題を解決し、エンターテイメント業界の発展に貢献するという理念のもとに計画されました。
そのアリーナの各フロアに1店舗ずつ計画されたFOODIES STANDは、アリーナ内で飲食物を提供する唯一の物販店舗です。横浜の地ビールやつくりたてのホットドッグなどオリジナリティーにこだわったメニューを提供し、ライブ会場の付加価値を高める施設として重要な役割を担っています。
クライアントの要望
“フードスタンド”としての新たなチャレンジ
広大なアリーナのホワイエ内において、お客様に店舗の存在をアピールし、その後押し寄せる3千人近くのお客さまにいかに対応するかが大きな課題としてありました。ライブハウス型アリーナという特性上、フードスタンドが立地するホワイエはモノトーンで無機質な空間にデザインされていました。そのような空間にフィットしながら「悪目立ち」させないで誘目性のあるファサードを構築するかが課題として提示されました。
また多いときで3千人近くのお客様が一度に押しかけることが想定され、通常の有人レジでは捌ききれません。そのためキャッシュレスの無人レジを10台並べ、多人数のお客様に対応することとなりました。ただしキャッシュレスレジを単に並べただけでは、無表情な店舗になってしまいます。無人化しながらも、いかにフードスタンドとしてのシズル感を出すかが店舗デザインの課題となりました。
デザインによる解決策
“らしさ”と“ライブ感”による店の顔づくり
空間にフィットさせながら誘目性をもたせるという矛盾する条件をクリアするために弊社が提案したのは、“ぴあらしさ”・“横浜らしさ”による店舗の顔作りです。まず遠くからよく見通せる欄間部分には店名やメニューとなるホットドッグが描かれたチョークアートによるサインを配置しました。背景が黒のチョークアートは空間に溶け込みながら、店舗の存在や提供されるメニューのシズル感をアピールすることできます。そして店舗自体をオープンキッチンスタイルとすることで調理のライブ感をお客様に感じ取ってもらうようにしました。店舗全体のデザインには、還元焼成によるレンガタイル、再利用された古木など手作りの温かみが伝わる素材とステンレスなどの無機質な素材を対比させ、ノスタルジックでありながらも都会的なセンスを併せ持つ横浜の雰囲気を取り入れています。
“キャッシュレスレジのある店舗デザイン”
キャッシュレジが10台も並ぶ店舗は日本国内でもまだあまり例がないと思われます。10台の無人レジが並んでも、フードスタンドとしても魅力を発揮するため、キャッシュレスレジ部分を含めてすべてオープンキッチンとして計画しました。キッチン内部から醸し出される調理のライブ感が伝わるように、キャッシュレスレジの筐体やカウンターをとことんシンプルで繊細なディティールとしました。また厨房機器の天板に人工大理石のテーブルを配置する、デザインパターンを施された磁器質タイルを壁面に貼るなどのデザイン処理を行うことで、キッチン内部が明るく清潔に見えるように配慮しています。
BIMによる設計
3Dモデルにより正確で迅速な設計フローを実現
プロジェクト開始時よりBIM(Building Information Modeling)を採用し、3Dモデルによる設計を行いました。3Dモデルから作成したウォークスルー動画やレンダリングパースを用いて計画内容のプレゼンテーションを行い、クライアントとのスピーディーな合意形成及び問題点の把握をいました。厨房機器やカウンター内の棚1枚1枚まで忠実に3Dモデルを作成し、施主はもちろんのこと、協業デザイナー、施工者などとも3Dモデルを確認し、常に完成形がイメージできる状態で設計及び現場を進めることができました。また基本設計図、実施設計図も3Dモデルから2D図面を抽出して作成しています。
完成してから発生するサイン設置検討などの追加工事対応にもBIMを活用し、施設運用にも継続して活用しています。
アート計画
機能をもったアートで“ぴあらしさ”をアピール
欄間部分に施されたチョークアートはホワイエ空間にいるお客様に店舗の存在をアピールするサインとしても機能しています。キャッシュレスレジ上部には店舗名である”FOODIES STAND”の文字をビールの泡をあしらったデザインの中に配置しています。出来上がったフードの受け取り側上部には、提供されるホットドッグやビールの絵柄とともに受け取リ場所を示す”Pick Up”の文字をデザインしました。
アートはスターバックスのアートワーク等で知られるフォーアーツデザインによってデザイン、制作されました。アートの着彩は現場でなされ、無機質で工業的な製品で仕上げられた建築空間内に、人の手のぬくもりを感じさせる“ライブ感”を創出し、エンターテイメントを通して社会を明るくしていこうとするぴあの本事業に対する想いを体現しています。
建築概要
所 在 地:横浜市西区みなとみらい
面 積:1F:62.05㎡ 2F:68.71㎡ 3F:32.60㎡
設計期間:約4ヶ月間
工 期:約6ヶ月間
施 主:ぴあ株式会社
プロデュース:株式会社メック・デザイン・インターナショナル
設計監理:ANALOG.Inc
設備設計:株式会社ケイズ・プランニング
施 工:株式会社メック・デザイン・インターナショナル
アート制作:株式会社フォーアーツデザイン
ロゴデザイン・サインデザイン:アトリエ景
照明協力:MODULEX
厨房機器:株式会社マルキ
セルフレジ:Okage株式会社
映像機器:ソニービジネスソリューション株式会社
写 真:梶原敏英
主な仕上げ材料
床 :ビニル床シート(溶接工法)
内 壁:PB下地のうえAEP塗装、磁器質タイルデザイン貼り、 レンガ調タイル貼り
天 井:PB下地のうえAEP塗装